A5052Pなどアルミ板(アルミ合金板)の板金加工実例
板金加工分野においてはよく”52S”や”5052”などと呼ばれて、一般によく用いられる、A5052Pに代表される アルミ板(アルミニウム合金板)による薄板精密板金・板金加工の製品実例をご紹介しております。
加工サンプル内容の詳細をご覧いただき、お見積もりやご注文の際の参考にしてください。
アルミ合金板の種類や規格、アルミの表面処理(アルマイト)などに関することも簡単に解説しておりますので、こちらも設計などの参考になれば幸いです。
■ サンプル1
アルミ板 A5052P t2.0(表面処理なし)の精密板金実例。個人様向け。趣味・ホビー用パーツ。タレパン(NCT)によるニブリング加工、穴は皿座ぐり加工。
■ サンプル2
アルミ板 A5052P t1.2〜t2.5(白・青・赤アルマイト処理)の精密板金実例。個人様向け。趣味・ホビー用として人気の自作オリジナル2足歩行ロボットのパーツ製作。
■ サンプル3
アルミアルマイト加工品(青色カラーアルマイト処理)のサンプル。アルミ板 A5052P t0.8〜t2.0 による精密板金実例。企業様向け新作二足歩行ロボット部品の試作。
■ サンプル4
黒アルマイト加工品(ブラックアルマイト処理)のサンプル。アルミ板 A5052P t1.0〜t2.0 による精密板金実例。企業様向けROBO-ONE大会エントリー用2足歩行ロボットの部品。
■ サンプル5
赤アルマイト処理品(ピンクアルマイト処理)のサンプル。アルミ板 A5052P t1.5/t2.0 による精密板金実例。企業様向けロボワン大会エントリー用2足歩行ロボットの部品。
■ サンプル6
アルミの白アルマイト板金加工品のサンプル。A5052P t1.0〜t2.0 による精密板金実例。大学研究室様向け。知能ロボット研究に用いる人間型の2足歩行ロボットのパーツ。
■ サンプル7
アルミ板 A5052P t0.3 及び 真鍮板 C2801P t0.3/t0.4 の板金加工例。フライフィッシングにおけるストリーマーフライ用の金属リップの板金試作及び順送型によるプレス量産加工。
■ サンプル8
アルミ板の赤アルマイト加工のサンプル。A5052P t2.0 による板金加工例。個人様向け趣味部品。BOX内部に電気回路を収納するためのアルミケースとして利用。
■ サンプル9
アルミ板 A5052P t1.5 による精密板金加工サンプル。企業様向けの特殊形状のアルミブランケット(アルミブラケット)。タレットパンチプレス(NCTタレパン)によるアルミ板金加工の実例。
■ サンプル10
アルミ板 A5052P t2.0 による精密板金加工サンプル。企業様向け。5種類のアルミ板部品をネジ止め(ビス止め)により組み立てて構成される治具。水素雰囲気中ではんだ付けを行うための位置決め治具として利用される。
■ サンプル11
アルミ板 A5052P t3.0 によるアルミ金具試作板金加工例。U溝をスライドに利用するアルミ板の固定金具(スライド金具)。家具・調度品・インテリア内装関係の用途を想定したU曲げ加工試作品。
■ サンプル12
アルミ板 A5052P t2.0 によるアルミ筐体板金加工例。個人様向けの趣味部品。上側のシャーシと下側のシャーシをネジ止めにより筐体にする簡易なケーシング方法の自作アルミケース(ボックス)。
■ アルミ板の種類や特性、サイズ・板厚、規格、アルマイト処理など
アルミ板には純アルミニウム板や、強度・加工・成形性・耐食性・溶接性などの改善を目的とした各種のアルミ合金板など、数多くの種類のアルミ板があります。
中でも一般板金材料として、最も広く利用されているアルミ板は、Al-Mg系合金の A5052P です。
A5052P は、板金用の板材として、「52S(ごーにーえす)」や、単に、「5052(ごーまるごーにー)」などとも呼ばれて幅広い分野で用いられています。
板金加工eyeにおけるアルミ製品も加工素材として用いるアルミ板としては、通常は、ほとんどがこの A5052P を利用しています。
A5052Pについて
機械加工品・切削加工品などを除き、板金加工eyeにおける一般的なアルミ板金部品の素材板として使用する A5052P は、調質(質別記号)が H34(1/2硬質)のアルミ板となります。
以下に、A5052P(調質:H34) アルミ板の各種特性を示します。
※データは代表値・参考値であって、保証値などではありません。
以下の内容を利用されて受けた損害などは補償できませんので自己責任にて参考にしてください。
A5052P-H34 の各種特性
- 化学成分(質量分率%)
- Si:0.25以下/Fe:0.40以下/Cu:0.10以下/Mn:0.10以下/Mg:2.2〜2.8以下
Cr:0.15〜0.35以下/Zn:0.10以下/その他:合計0.15(個々0.05)以下/Al:残部 - 物理的性質
- 比重:2.69 / 液相線温度:649〜(℃) / 固相線温度:607(℃)
線膨張係数(20〜100℃) :23.8(×10-6/℃) / 体積膨張係数(20℃) :69(×10-6/℃)
比熱(20℃) :900(J/kg・℃) / 熱伝導度(20℃) :137(W/(m・℃)) - 室温での標準的な機械的性質
- 引張強さ指標:195〜295N/mm2 / 引張強さ:260N/mm2 / 0.2%耐力:215N/mm2
伸び:12% / 硬さHB:60 / 剪断強さ:145N/mm2 / 疲れ強さ:125N/mm2
縦弾性係数(引張り):69.3kN/mm2 / 縦弾性係数(圧縮):70.7kN/mm2
剪断弾性係数:25.9 / ポアソン比:0.3 - 高温及び低温の機械的性質(10,000hまで保持の間の最低強度)
- −196℃ : 引張強さ 380N/mm2/0.2%耐力 250N/mm2/伸び 28%
- −80℃ : 引張強さ 275N/mm2/0.2%耐力 220N/mm2/伸び 21%
- −30℃ : 引張強さ 260N/mm2/0.2%耐力 215N/mm2/伸び 18%
- 25℃ : 引張強さ 260N/mm2/0.2%耐力 215N/mm2/伸び 16%
- 100℃ : 引張強さ 260N/mm2/0.2%耐力 215N/mm2/伸び 18%
- 150℃ : 引張強さ 205N/mm2/0.2%耐力 185N/mm2/伸び 27%
- 205℃ : 引張強さ 165N/mm2/0.2%耐力 105N/mm2/伸び 45%
- 260℃ : 引張強さ 85N/mm2/0.2%耐力 50N/mm2/伸び 80%
- 315℃ : 引張強さ 50N/mm2/0.2%耐力 38N/mm2/伸び 110%
- 370℃ : 引張強さ 34N/mm2/0.2%耐力 21N/mm2/伸び 130%
- 耐食性
- 一般的に耐食性は良好。大気および海水に対する耐食性に優れ、外観及び機械的特性の変化では 1100合金より海水に対して強い性質をもつ。
応力腐食割れについては実用上及び実験室的にみて問題なし。 - 成形性
- 曲げ加工など加工性は良好。絞り成形、打ち抜き穴あけ部品に適する。3004合金より加工硬化率は大きい。
- 接合性
- 溶接性は良好。ろう付け性には劣る。
- 切削性(機械加工性)
- 切削性は硬質材で中程度であり、若干の配慮が必要。
- 表面処理性
- 陽極酸化処理性が良好。アルマイト製品として広く用いられる。
- 経済性
- 良好。1×2メーター板や4×8シハチ板などの板材が市中在庫で広く流通している。
アルマイト処理を施したアルマイト板の1×2メーター板や4×8シハチ板も流通する。 - その他一般事項
- 中程度の強度をもった代表的なアルミ合金で、耐食性、成形性、溶接性がよい。
船舶用・車両用・建築用材、飲料缶・包装容器用等、各種板金用途に広く用いられる。
A5052P アルミ板の定尺サイズ・寸法
A5052Pアルミ板の定尺サイズ(標準寸法)としては以下の定尺板があります。
市中に流通している定尺板としては、以下のメーター板が最も多く、アルミ板金加工素材として利用されています。
- A5052P アルミ板の定尺サイズ
- ・1×2(1,000mm×2,000mm):通称「メーター板」
・4×8(1,250mm×2,500mm):通称「シハチ」(※)
・5×10(1,525mm×3,050mm):通称「ゴトウ、ゴットウ」(※)
(※)A5052Pアルミ板の 4×8(シハチ:1,250mm×2,500mm)及び 5×10(ゴトウ:1,525mm×3,050mm)の寸法は、SPCC鋼板やステンレス板(SUS304-2B)と若干サイズが異なるので注意が必要です。
アルミ板の標準板厚寸法
A5052P などの冷間圧延アルミ板の標準板厚サイズとしては以下の板厚になります。
基本的には以下のサイズ以外の板厚は市中に流通がないので、設計の際などには標準板厚から選定する必要があります。
- A5052P アルミ板の標準板厚寸法(mm)
- t0.5、t0.8、t1.0、t1.2、t1.5、t1.6、t2.0、t2.5、t3.0、t3.2
なお、A5052Pアルミ板としては、t15.0程度までは1×2メーター板で市中品でも流通していますが、通常、板金加工eyeで板金用として使用する板厚はt3.0までとなります。
定尺板の重量及び板厚寸法公差
一般的に流通する A5052P の定尺板(1×2メーター板:1000mm×2000mm 及び 4×8シハチ板:1250mm×2500mm)の、板厚寸法公差と各板厚における1枚当たりの重量は、以下の表1及び表2の通りです。
なお、A5052P の比重は、2.69 となります。
表1.A5052Pアルミ板 1×2メーター板の重量及び板厚寸法公差(PDFファイル版)
表2.A5052Pアルミ板 4×8シハチ板の重量及び板厚寸法公差(PDFファイル版)
アルミニウムの一般的な特徴
- 密度(比重)が小さい
- アルミニウムは密度(比重)が鉄や銅の約1/3であり、車両・船舶・航空機などの交通機関、土木・建築などの分野で軽量化に貢献している。
- 加工性がよい
- アルミニウムは展伸性に富んでいるので、板・箔・棒・管(パイプ)・線・形材などさまざまな形状の製品を容易に製造することができ、切削加工や成形加工も容易である。
- 耐食性がよい
- アルミニウムは酸やアルカリには強くないが、大気中で自然に耐食性のよい酸化皮膜が形成され、自己防護するため優れた耐食性をもち、鉄などのように赤さびを生じることがない。
- 強度
- 合金種類及び質別により、引張強さは 70〜600N/mm2と変化させることができるので、目的・用途に応じて適切なアルミ合金を選ぶことができ、選択肢も広い。
- 表面処理性
- 無色透明な酸化皮膜をアルミ表面に形成させるアルマイト処理(一般に、白アルマイト処理という)によって、銀白色の金属光沢を保ったまま、耐食性や耐摩耗性を改善させることができる。さらに、一般に、カラーアルマイト処理や染色アルマイト処理などと呼ばれるように、染色、自然発色、電解発色などの方法によって様々な色調を与えることもできる。
- 熱伝導性がよい
- アルミニウムは熱を伝えやすいため、エンジン部品、熱交換器、冷暖房装置、家庭用品などに広く利用されている。
- 電気伝導性がよい
- アルミニウムは、銅の約6割程度の導電率を有しており、銅の半分程度の重さのアルミニウムを使用して、銅と同程度の電流を通すことが可能である。そのため、送電線や配電線などに適している。
- 低温特性がよい
- 一般にアルミニウムは温度が低下するにつれて強度は上昇し、超低温範囲に至るまでは普通鋼のような低温ぜい性を示すことがないので、LNGなど低温プラント装置などにも広く利用されている。
- 反射性
- アルミニウム表面の光は、熱や電波をよく反射する。そのため、照明器具、暖房器の反射板、パラボナアンテナなどに用いられている。
- 非磁性体
- アルミニウムは電磁気の磁場の影響をほとんど受けないので磁気を帯びることがない。そのため、非磁性を必要とする各種の電気機器に利用される。
- リサイクルに適する
- アルミニウムはスクラップの再生利用が他の金属に比べて非常に容易であるのでスクラップ価値が高く、資源の有効活用に役立っている。
- 無毒性
- アルミニウムは一般に毒性がなく、食品・飲料などとの反応も無いので、飲料缶や食品包装容器、家庭用器物に利用されている。
アルミニウム種類・分類
アルミニウムは軟らかくて展伸性に富む金属材料の一種ですが、用途によってはさらに強度や耐食性を高めるなどの性質を改善する必要がある場合には、種々の合金元素を加えたアルミニウム合金として使用されています。
アルミニウム合金を大別すると、板・箔・形材・パイプ・棒・線・鍛造品などの展伸材と、鋳物・ダイカストなどの鋳造材に分類されます。
板金加工に用いるアルミ板も展伸材の一種となる訳ですが、展伸材はさらに、非熱処理型合金と熱処理型合金とに分類されます。
非熱処理型合金と熱処理型合金にはそれぞれ以下の系統の合金があり、板金用に通常用いるA5052Pは、以下の Al-Mg系合金(5000系合金)となります。
- 非熱処理型合金(展伸材)
- ・純アルミニウム(1000系)
・Al-Mn系合金(3000系合金)
・Al-Si系合金(4000系合金)
・Al-Mg系合金(5000系合金) - 熱処理型合金(展伸材)
- ・Al-Cu-Mg系合金(2000系合金)
・Al-Mg-Si系合金(6000系合金)
・Al-Zn-Mg系合金(7000系合金)
主なアルミ板の種類と比重・特性・用途・流通性・経済性
数あるアルミ合金板のうち、代表的なアルミ及びアルミ合金板の種類と、それぞれの比重、特性、特徴や用途、板材の流通性・経済性などを以下にまとめます。
※特性(成形性・溶接性・表面処理性・耐食性)については、A〜Dまで4段で評価しています。
■純アルミニウム(1000系)
- 1060
- 比重:2.70/成形性:A/溶接性:A/表面処理性:A/耐食性:A/流通性:○/経済性:−
導体用純アルミニウムで電気伝導性が高い。強度を必要とする場合は 6101 を使用する。ブスバーなどの導電用など。 - 1080
- 比重:2.70/成形性:A/溶接性:A/表面処理性:A/耐食性:A/流通性:○/経済性:−
純アルミニウムのため強度は低いが、成形性、溶接性、表面処理性及び耐食性がよい。耐食性はアルミニウム合金中最もよい。装飾品、銘板、熱交換器、化学工業用タンク類、化学装置、配管用など。 - 1070
- 比重:2.70/成形性:A/溶接性:A/表面処理性:A/耐食性:A/流通性:○/経済性:−
純アルミニウムのため強度は低いが、成形性、溶接性、表面処理性及び耐食性がよい。耐食性はアルミニウム合金中最もよい。装飾品、銘板、熱交換器、化学工業用タンク類、化学装置、配管用など。 - 1050
- 比重:2.71/成形性:A/溶接性:A/表面処理性:A/耐食性:A/流通性:◎/経済性:A
純アルミニウムのため強度は低いが、成形性、溶接性、表面処理性及び耐食性がよい。耐食性はアルミニウム合金中最もよい。装飾品、銘板、熱交換器、化学工業用タンク類、化学装置、複写機ドラム、反射板、照明器具、導電材、配管その他一般用など。 - 1100
- 比重:2.71/成形性:A/溶接性:A/表面処理性:A/耐食性:A/流通性:◎/経済性:A
AL純度が99.0%以上の一般用途のアルミニウム。陽極酸化処理後の外観がやや白っぽくなる。純アルミニウムのため強度は低いが、成形性、溶接性、表面処理性及び耐食性がよい。耐食性はアルミニウム合金中最もよい。一般器物、建築用材、電気器具、各種容器、印刷板、台所用品、フィン、キャップなど。
■Al-Cu-Mg系合金(2000系合金)
- 2011
- 比重:2.82/成形性:D/溶接性:D/表面処理性:C/耐食性:D/流通性:−/経済性:B
快削アルミ合金。切削性が優れ、強度も高いが耐食性が劣る。自動機用快削棒(スーパーマシナロイ)など。 - 2014
- 比重:2.80/成形性:D/溶接性:C/表面処理性:C/耐食性:D/流通性:○/経済性:−
強度が高い熱処理合金。Cuを多く含むため耐食性は良くないが、強度が高く、構造用材として使用されたり鍛造用に適用される。航空機用材、車両用など各種機器部品、各種構造材、鍛造用など。 - 2017
- 比重:2.79/成形性:C/溶接性:C/表面処理性:C/耐食性:D/流通性:◎/経済性:B
強度が高い熱処理合金。構造用材として使用されたり鍛造用に適用される。切削加工性もよい。一般切削用、航空機用材、自動車、二輪車など各種機器部品、各種構造材など。 - 2024
- 比重:2.77/成形性:C/溶接性:C/表面処理性:C/耐食性:D/流通性:◎/経済性:C
強度が高い熱処理合金。2017より強度が高く、構造用材として使用されたり鍛造用に適用される。切削加工性もよい。航空機用材、自動車など各種機器部品、各種構造材など。 - 2219
- 比重:2.84/成形性:C/溶接性:B/表面処理性:C/耐食性:C/流通性:◎/経済性:C
高温強度に優れ、耐熱性、溶接性も良い。耐食性も2000系合金中では良好。航空宇宙機器、高温・低温用など。
■Al-Mn系合金(3000系合金)
- 3003
- 比重:2.73/成形性:A/溶接性:A/表面処理性:A/耐食性:A/流通性:○/経済性:−
1100より強度が若干高く(約10%程度)、成形性、溶接性、耐食性に優れる。純アルミニウムよりやや強度のある熱交換器用、複写機ドラム、一般用器物、建築用材、船舶用材、フィン材、各種容器など。 - 3004
- 比重:2.72/成形性:A/溶接性:B/表面処理性:A/耐食性:A/流通性:○/経済性:−
3003より強度が高く、深絞り性に優れ耐食性もよい。飲料缶、屋根板、ドアパネル材、カラーアルミ、電球口金など。
■Al-Si系合金(4000系合金)
- 4032
- 比重:2.68/成形性:D/溶接性:C/表面処理性:D/耐食性:C/流通性:−/経済性:−
耐食性、耐摩耗性に優れ、熱膨張係数が小さい。VTR、FDDなどの事務機器部品など。
■Al-Mg系合金(5000系合金)
- 5005
- 比重:2.70/成形性:A/溶接性:A/表面処理性:A/耐食性:A/流通性:○/経済性:−
3003と同程度の強度があり、耐食性、溶接性、加工性が良い。陽極酸化後の仕上がりが良好で、6063型材とよくカラーマッチする。建築内外装材、車両・船舶内装材など。 - 5052
- 比重:2.68/成形性:B/溶接性:A/表面処理性:A/耐食性:A/流通性:◎/経済性:A
中程度の強度をもった最も代表的なアルミ合金で、耐食性、溶接性、成形・加工性がよい。特に強度のわりに疲労強度が高く、耐海水性が優れている。純アルミより強度のある一般用、一般板金用、事務機器、船舶・車両・建築用材、飲料缶、カメラなど。 - 5056
- 比重:2.64/成形性:A/溶接性:A/表面処理性:A/耐食性:A/流通性:−/経済性:A
耐食性に優れ、切削加工による表面仕上がり、陽極酸化処理性とその染色性がよい。純アルミより強度のある一般用、切削用、事務機器、カメラなど。 - 5083
- 比重:2.66/成形性:B/溶接性:A/表面処理性:A/耐食性:A/流通性:◎/経済性:B
溶接構造用合金。実用の非熱処理合金中で最も強度の高い耐食合金で、溶接構造に適する。耐海水性、低温特性もよい。溶接構造、配管用、船舶・車両用材、低温用タンク、圧力容器など。
■Al-Mg-Si系合金(6000系合金)
- 6061
- 比重:2.70/成形性:B/溶接性:A/表面処理性:A/耐食性:B/流通性:◎/経済性:C
熱処理型の耐食性合金。T6処理によりかなり高い耐力値が得られるが、溶接継手強度が劣るため、主にボルト・リベット接合の構造用材として用いられる。船舶・車両用材、陸上構造物、耐食性・強度を必要とする用途、配管、軟式用バットなど。 - 6063
- 比重:2.69/成形性:C/溶接性:A/表面処理性:A/耐食性:A/流通性:−/経済性:A
代表的な押出用合金。6061より強度は低いが、押出性に優れ、複雑な断面形状の型材が得られ、耐食性・表面処理性も良好。家具、日用品、配管その他一般用、エアシリンダ管、コピードラムなど。 - 6N01
- 比重:2.70/成形性:C/溶接性:A/表面処理性:A/耐食性:A/流通性:−/経済性:−
強度が中程度の押出用合金。6061と6063の中間の強度があり、押出性、プレス焼入れ性ともに優れ、複雑な形状の大形型材が得られる。耐食性もよく溶接も可能。車両用、陸上構造物用、船舶用など。 - 6101
- 比重:2.69/成形性:B/溶接性:A/表面処理性:A/耐食性:A/流通性:−/経済性:−
高強度導体用合金で、電気伝導性が高い。ブスバー、電線など。
■Al-Zn-Mg系合金(7000系合金)
- 7003
- 比重:2.79/成形性:C/溶接性:B/表面処理性:C/耐食性:B/流通性:−/経済性:−
7N01より若干強度は低いが、押出性がよく、薄肉の大形型材がえら得る。車両用など。 - 7N01
- 比重:2.78/成形性:C/溶接性:A/表面処理性:C/耐食性:B/流通性:○/経済性:−
溶接構造用合金。強度が高く耐食性も良好。溶接部の強度が常温放置により、母材強度に近いところまで回復する。溶接構造用、車両その他の陸上構造物など。 - 7075
- 比重:2.80/成形性:D/溶接性:C/表面処理性:C/耐食性:C/流通性:◎/経済性:D
アルミニウム合金の中で最高の強度を有する合金の一つ。耐食性は劣る。合せ板は、表面に7072をはり合わせ、耐食性を改善したものであるがコストが高い。航空機などの機器部品、スキーなど。
アルミ板の表面処理(アルマイト処理)
アルミ板は銀白色の金属光沢をもつ耐食性の優れた材料であり、用途に応じて種々の表面処理を施すことができる金属ですが、表面処理の基本は酸化皮膜であり、アルマイト処理が広く一般に用いられます。
- アルマイトとは
- アルマイトとは(アルマイト処理とは)、アルミニウムの表面を陽極として主に強酸中で水の電気分解により表面を酸化させてコーティングする技術の総称で、陽極酸化処理とも言う。
アルミニウムの耐食性や耐摩耗性の向上や、さまざまな着色をして装飾することなどを目的とした表面処理。
アルマイトは、1929年に理化学研究所で開発された登録商標(商品名)であるが、現在では、アルミニウムの陽極酸化皮膜、或いは皮膜された製品の総称として広く一般に用いられている。
ALMITE と表記するが、英語での呼称は、「anodic oxide coating」などと言う。
機械部品などでは、耐食性や耐摩耗性を高めるために、白アルマイトや硬質アルマイトなどの処理がよく用いられます。
また、二足歩行ロボットやラジコン部品などホビー用パーツなどでは、赤・青・黒などの着色(染色)を施したカラーアルマイトも人気です。(以下のアルマイトサンプル参照)
【アルミ板のアルマイト処理例】
アルミ板のJIS規格
板金加工用アルミ板の代表であるA5052Pをはじめとし、その他各種アルミ板について規定しているアルミ板のJIS規格には、以下の規格があります。
- JIS H 4000 アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条
- 圧延(冷間圧延又は熱間圧延)したアルミニウム及びアルミニウム合金の板、合せ板、条及び円板について。
種類・等級・記号、化学成分、機械的性質、導電率、アルミ板の標準寸法及びその許容差などの規定がある。
上記のアルミ板の規格のほか、棒・線・パイプ・押出形材などのアルミ素材・製品の規格やアルミニウムに関連する主なJIS規格を以下にリストアップしますので参考にしてください。
- JIS C 3108 電気用硬アルミニウム線
- JIS C 3109 硬アルミニウムより線
- JIS C 3110 鋼心アルミニウムより線
- JIS C 3215-0-3 巻線個別規格−第0部:一般特性−第3節:エナメルアルミニウム線
- JIS C 3215-14 巻線個別規格−第14部:クラス105のポリビニルアセタールアルミニウム線
- JIS C 3503 CATV用(給電兼用)アルミニウムパイプ形同軸ケーブル
- JIS F 2008 船用アルミニウム合金押出形材
- JIS F 2009 船用アルミニウム合金押出対称形材
- JIS G 4202 アルミニウムクロムモリブデン鋼鋼材
- JIS H 0001 アルミニウム,マグネシウム及びそれらの合金−質別記号
- JIS H 0201 アルミニウム表面処理用語
- JIS H 2102 アルミニウム地金
- JIS H 2103 アルミニウム二次地金
- JIS H 2110 電気用アルミニウム地金
- JIS H 2111 精製アルミニウム地金
- JIS H 2118 ダイカスト用アルミニウム合金地金
- JIS H 2211 鋳物用アルミニウム合金地金
- JIS H 4001 アルミニウム及びアルミニウム合金の焼付け塗装板及び条
- JIS H 4040 アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線
- JIS H 4080 アルミニウム及びアルミニウム合金継目無管
- JIS H 4090 アルミニウム及びアルミニウム合金溶接管
- JIS H 4100 アルミニウム及びアルミニウム合金の押出形材
- JIS H 4140 アルミニウム及びアルミニウム合金鍛造品
- JIS H 4160 アルミニウム及びアルミニウム合金はく
- JIS H 4170 高純度アルミニウムはく
- JIS H 5202 アルミニウム合金鋳物
- JIS H 5302 アルミニウム合金ダイカスト
- JIS H 8300 亜鉛・アルミニウム及びそれら合金の溶射
- JIS H 8601 アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜
- JIS H 8602 アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜
- JIS H 8603 アルミニウム及びアルミニウム合金の硬質陽極酸化皮膜
- JIS H 8642 溶融アルミニウムめっき
- JIS S 1121 アルミニウム合金製脚立及びはしご
- JIS S 2010 アルミニウム板製品器物
- JIS W 1110 航空宇宙−アルミニウム合金の化成皮膜処理−一般用
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